ウェルク(Welq)騒動 (12/7 追記あり)
DeNAが運営するメディア「ウェルク(Welq)」というサイトが大炎上している。
ウェルクとは、DeNAが今後の主力事業の1つにしていこうと力を入れているメディア事業の一翼を担う医療情報メディアである。
今年の7月には、利用者数631万人という発表がなされた。
この集計がどの程度正しいのかは、私は評価する能力を持たないが、この数字が大きく盛られたものであったとしても、一定数の利用者がいることは間違いないだろう。
炎上の直接のきっかけとなったのは、SEO専門家の辻正浩氏が自身のツイートで告発をしたことだ。(私の知りうる限り。)
これに触発され、Twitterやブログなどで、この話題が取り上げられるようになる。
たとえば、
など。
これをさらに、突撃メディアのBuzzFeeDが深堀りする。
このBuzzFeeDの記事によると、この時点ですでにDeNA側が何らかの対応を行ったのか、一部の記事が閲覧できない状態になっていたようだ。
さらには、SEOの問題だけではなく、そもそも記事内容に医療の観点からデタラメな記事が大量に掲載されているという、記事の質の問題についても、医療関係者からのツッコミが激しくなってきた。
これに呼応するように、ブログ界のバズーカ砲の一人である永江一石氏による砲撃が始まった。
こうなってくると当然のごとく、このネタをまとめサイトも放ってはおかない。
このような事態を受け、ウェルクが運営方針の見直しを発表。
これを受け、大手ネットメディアでも取り上げられるようになってくる。
ただし、この運営方針の変更の内容について、疑義を呈する声も上がる。
たった五千万で二万件以上のコンテンツミル製量産記事をリライトかけられるわけがない… それ以上に、あれが大した問題でないと判断してしまう遵法精神が理解できないな。肩に霊が乗る記事を掲載する健康サイトに意義あるのかねえ… https://t.co/Js8sDC4ILs
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2016年11月25日
さらに、永江氏による第二砲が放たれる。
そして、ウェルクの元ライターを自称する方による告発も。
この告発は、永江氏のブログにも引用され、たちまちバズることとなる。
ここまで、悪手による典型的な延焼である。
(ネット企業のほうが、意外と炎上対応は下手なものだ。)
ちなみに、「炎上」のメカニズムについてほとんど唯一学際的アプローチで著された書籍である『ネット炎上の研究』においては、ごく少数の、かつ、コミュニケーション能力に難のある人が参加するものであると断じているが、今回の炎上についてはそれに当てはまらないケースであることが明白である。
もちろん、『ネット炎上の研究』において詳らかにされるようなケースもあるが、そうでないものも今回のケースに限らず、多々発生しているのは、普段からネット界隈をウォッチしていれば明白である。著者におかれては、このような現状も踏まえた論を上梓してくださることを期待して止まない。
さて、今回の騒動については、単に「DeNAがけしからん」という矮小化された議論にとどまるべき問題ではなく、webサービスの倫理自体に立ち返って考察を深めるべきではないか。
行儀作法の問題ではなくあれは単なる犯罪行為なので、キャピタリストが奨励するのは違うんじゃないですかね。 https://t.co/r8zIVtDQtY
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2016年11月25日
新しいビジネスが法の隙間、グレーゾーンから生まれることは否定しない。だからこそ関わる会社や人は法によらない自分なりのセーフ/アウトの基準と倫理観を持つべき。
— K. Nishiyama (@ashikagunso) 2016年11月25日
メルカリやUberは毀誉褒貶ある中で彼らなりの基準は持っている。
welqにはあるのか?あるなら堂々と主張して欲しい。
いいかげんな医療情報を大規模にネットに放流すれば集客出来ることも儲かる事は分かっていたものの、モラルが歯止めになって誰も大規模にはやらなかったのに、善悪の区別がつかないネジが外れた担当者群とそれを許容する会社が暴走した結果インターネットの自由度がまた削られる事になりそうで悲しい。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) 2016年11月24日
(追記)
さらにこんな分析まで出てきちゃって。
もともとDeNAといえば、ビッターズで起業したものの鳴かず飛ばずで、今は亡きINDEXの資本と人材を受け入れてモバオクで小銭を手に入れ、それを原資にガラケーゲームサイト「モバゲー」で一発当てたものの、その後の事業はイマイチ。
この記事で分析されているような、にっちもさっちもいかない事情もあるのだろう。
それが今回の件を正当化する事由にはならんだろうけど。
(追記2)
永江砲 第3弾が発射されました。
(追記3)
BuzzFeeDによる、丹念な取材記事が出ました。
(追記4)
満を持して山本一郎砲が放たれました。
(追記5)
永江砲 第4弾。
この記事中にも触れられているが、ついに音喜多議員もついにこの件に言及。
(追記6)
ついにウェルクの全記事が非公開となった。
早速BuzzFeeDがこれを報じる。
DeNAは今後、ほかのキュレーションメディアの運営も含め、どのように方針を再構築していくのか、今後も刮目すべきだろう。
(追記7)
辻正浩氏が、今回の件を受けての検索エンジンの役割について、非常に示唆的な一連のツイートをされているので、検索エンジンの中立性を考える上でも是非目を通しておくべきだろう。
GoogleがWELQをBANしないのが悪いという話をちらほら見ますが、それは違うと言わせてください。それは違う。それは逆に恐ろしいことです。そのことについて詳細をいくつかツイートします。
— 辻正浩 | Masahiro Tsuji (@tsuj) 2016年11月28日
(以下、数ツイート続きますので、続きはこのツイートをクリックしてどうぞ)
(追記8)
おときた都議のブログでは、東京都の担当部局による対応について、おときた都議目線での経緯が語られています。
東京都の対応に対してのDeNAの返答について、Twitterではこんな声も。
金融だったら湯島とか霞ヶ関に呼ばれて多忙とか言った瞬間消されるよねww→
— 次郎丸(´・_・`)哲戸 (@_Jiro70) 2016年11月30日
薬事監視担当課が事情を聞きたいとDeNAの担当者に対して来庁を依頼していた。DeNAの担当者が多忙のため面会は実現していないが、余裕ができたら連絡してほしい https://t.co/8gav6FjYlJ
都議会のセンテンススプリングこと、おときたプリンスに突っ込まれたので対応せざるを得ない都庁役人と、DeNA側は今頃必死でカウンセルからオピニオンショッピングして厚労省の官僚に向いてて、都の木っ端役人の相手なんてしてられないとかなのかな https://t.co/MzwHoC4caG
— 次郎丸(´・_・`)哲戸 (@_Jiro70) 2016年11月30日
さらには、最近炎上記事でPV稼いでると呼び声の高い東洋経済オンラインでもこの書かれっぷり。
(追記9)
ウェルクだけでなく、他に8サイトのキュレーションメディアを非公開とすることが、代表のお詫びメッセージとともに発表された。
代表は、テッククランチのインタビューにも答えている。
この判断や対応を高く評価する声もある。
村田氏の過去の問題や、法務が買収に反対したこと、自身は事業を把握してなかったこと含め、正直に話してるな。
— たにやん (@t_taniyan) 2016年12月1日
DeNA守安氏「認識が甘かった」——WELQに端を発したキュレーションメディアの大騒動 |TechCrunch Japan https://t.co/2MxBsWswAG
監修はつけられないかもしれないが、間違った情報を流さないように心がけることはできるはずなので、今回のDeNA守安さんの英断をきっかけにネット社会が少しでも良い方向に動くようになってほしい。 https://t.co/shfcgJ7ZaL
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2016年12月1日
その一方ではこんな声も。
守安氏の話iemoやMERYを50億で買収時に法務から「著作権的に黒か白か分かりづらい」と指摘されても買って村田氏をトップに据え、BUZZNEWSの盗用問題も把握した上で丸投げとか。あのやり方を容認と思われてもしょうがないのでは https://t.co/n5bLS3T0Se
— 本田雅一(本人未確認) (@rokuzouhonda) 2016年12月1日
「記事」にはまったく興味がないとよくわかるDeNA社長のインタビュー。世の中には「コンテンツ」という語彙を嫌うひとが多いが、それはこういう人への嫌悪からだろう。 https://t.co/FVUZTylBUd
— urbansea (@urbansea) 2016年12月1日
市況かぶ全力2階建も当然記事化。
さらには、余波はDeNA内にとどまらず、記事の発注先であったクラウドソーシングへも。
ちなみに、今回の判断は「非公開」であり、サービス終了ではない。おそらく再開することを諦めていないであろうことが推察されるような話も漏れ聞こえてくる。
実にシュールなバイトが来ました。1万件ほどあるWELQの非公開記事を好きなの選んでいいから1件につき1,2万で修正・監修するというもの、笑。BuzzFeedさん、頑張ってください!https://t.co/4b76FODXON
— 村中璃子/ RIKO MURANAKA (@rikomrnk) 2016年11月30日
(追記10)
まさか追記が10回を超えるとは思ってもいなかった。
山本一郎氏による、今回の一連の騒動のより核心に迫る記事が出た。
また、北海道大学の法学の先生が、情報法の観点から今回の問題点を指摘している。
それにしても、これほどまでにDeNAのサービスが話題になるのなんて、女子高生殺人事件以来なんじゃなかろーか。
(追記11)
満を持して、徳力氏が吠えました。
徳力氏といえば、まさにアルファブロガーのはしりともいえる方。
非常に真っ当で丁寧な議論をする方で、かつ、記事の文章が人一倍長いことでも有名で、場合によっては「三行でまとめてくれ」などの揶揄もあったりするのだが、今回のこの記事については絶賛する声も多い。
徳力さんの文章は、インターネットが出てきた時にみんなが熱くなった、その思想や理想が感じられて好きですね。
— とくさん (@nori76) 2016年12月3日
ワタシが提唱する、ツッコミ力、スルー力と並ぶブロガー三大力の一つ「徳力」を久しぶりに実感できる文章である https://t.co/cvMF0MOYTL
— yomoyomo (@yomoyomo) 2016年12月3日
(追記12)
もう追いかけるのが面倒になってきたが、ウェルク余波が止まらない。
これについては、こんな分析も上がっている。
MERYが7日までクローズできないのは広告契約の関係だろうってことだけど、となると今掲載中の記事は純粋に広告ということになる。でも表記を見るとそうは見えない。
— 本田雅一(本人未確認) (@rokuzouhonda) 2016年12月5日
興味ある人は本日時点のサイトをスナップショットで取っておくといいかも(できないのかな)
さらにここにきて、DeNA以外のキュレーションサイトについても見直しの動きが。
これを絶好のタイミングと見たのか、立ち上げ当初から真っ黒で有名なNAVERが真摯な態度を見せつけてくる。
なんの茶番かと思ったら、やはり批判的な意見も多々見られた。その代表的なものがこちら。
個人的にはあの発表内容は、どのような解釈をしても、称賛できるものでは無いと思います。
— 不破雷蔵(懐中時計) (@Fuwarin) 2016年12月5日
「ネットがこのままではいけない…」NAVERまとめ生みの親がキュレーションの問題点と新方針を語る(BuzzFeed Japan) - Yahoo!ニュース https://t.co/pAquwnWpcH #Yahooニュース 「」内で関係者が語っている内容がことごとく意味がない。
— 不破雷蔵(懐中時計) (@Fuwarin) 2016年12月5日
もちろん、山本一郎氏も追撃の手を緩めない。
denaは、MERY、iemoを買った経緯からしておかしく、あの値段を決めて、法務の消極的な反対を押して投資を決行したのは守安功さんでしたかね… あのお金はどこに行ったのか、また、その後始まった遺伝子検査の事業は南場智子女史が担当でしたか、あれの妥当性はどうなんですかね。
— 山本一郎(やまもといちろう) (@kirik) 2016年12月5日
(追記13)
DeNAにより、記者会見が開かれた。
以下、ログミーによる全文書き起こし。
このブログを更新している時点では、まだログミーの書き起こしは出そろっていないが、それでも、3つめに記載のある以下の南場会長の発言は注目すべきではなかろうか。
(以下、引用)
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家族の闘病が始まった時から、インターネット情報を徹底的に調べまして、インターネット上の情報がそれほど役に立たないとか、その先にガンに効くキノコとかそういう話が出てきて、信頼できないと2011年時点で思いまして、私の情報収集は論文と専門家からのレクチャーを受けるということを中心にしていました。
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(引用ここまで)
なぜユーザーとして受けたネット情報に対する印象を、自社サービスのクオリティに対するチェックに生かせなかったのか。
なぜ自身の介護に使えないようなサービスを提供してしまったのか。
また、まだ書き起こしには記載されていないが、守安氏による社長続投意向を受けての南場会長の発言として、守安氏が社長に適任だと思う理由として「数字に強い」ということを挙げていた。
逆に、今回の事態を招いたのは数字ばかり見ていたからではないのか。
僕がもし仮に会見現場で質問する機会を与えられたら、きっと以下のような質問を投げかけていたことだろう。
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DeNAさんは、事業をすべてKPIで管理されているとお聞きしたことがありますが、今回の騒ぎの原因となったキュレーションサイトを買収する際にも、数字でしかお考えにならなかったのではないですか。つまり、デューデリジェンスを軽視されたのではないですか。
法務部門によってコンプライアンス上の問題を指摘されていたにもかかわらず買収されたのは、コンプライアンス上の問題そのものについて評価せず、コンプライアンスリスクの顕在化の可能性や、そのリスクが顕在化した際の損失の試算が、リスクが顕在しない可能性のほうを大きく見積もった結果なんじゃないですか。
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僕はもうネット業界に入って20年近く経過するロートルだが、ネット業界をリードする企業がネットの価値を毀損するようなことを平気でやってきたということがどうしても許せない。